MOTO GUZZI
ここでいうモトグッチとは、現行車のことではないということを最初にお断りしておきます。
それは本当のモトグッチ社が製作した、トンティフレームを持つV7からルマン1000までの、空冷2バルブのお話です。
ここでは、4バルブのデイトナや、イモラ、ラリオ。のスモール系は除外いたします。簡単に理由を述べるなら、現在でもいかようにコンディション維持ができるのは、先の2バルブに限られるからです。
このへんを順を追って説明いたしましょう。
三つの顔を持つ野獣
一台で三台分の乗り味を持つ。それがルマン系の2バルブの特徴です。低速域ではハーレーの鼓動感を持ちます。ハーレーって言っても、最近のものじゃなく、ショベル系のソレです。では中速域はというと、あたかもBMWの如し、それもやはり2バルブのR90あたりの感触で、その回転域では、一日中でも走れるスムーズなフィール。ではと四千回転を超えて回せば、ドカティのエキゾチックさを覗かせます。ドカティったってこれも現行車のそれではなく、ベベル系のフィーリングです。
そこにもう一振り、シャフトドライブと横置きフライホイールの挙動が加わります。その癖は、もうクセになる唯一無二の身のこなし。そこから、インテグラルブレーキというリヤを踏むだけで、前後のブレーキが作動する車のようなシステムは、前後のサスを同時に沈めるので、ノーズダイブというものがなく、右手をアクセルワークに専念させることで、他者に類を見ないライディング技術を要求します。コーナー奥深くまでブレーキペダルを踏み、出口が見えた瞬間、ペダルを離すと、放たれるロケット的な加速。この時1000などは、まさしく瞬間移動。目が眩むような加速感です。
そして、信じられないほどの燃費。ツインキャブのデロルトはセッティングが決まればリッターあたり25km/Lを楽に叩き出し、20リッターを超える容量のタンクから、無給油で400kmは走れるロングディスタンス。どうですか?乗ってみたくなってきましたか。グッチのオーナーが乗り換えるのは別のグッチ。もうグッチ乗りにはこれ以外では魂を鎮めることができなくなるのです。
とはいえ、これらの車両。少し前までは捨て値で取引されていたのに、最近では平気で300万円とか。いい加減にしましょう。
ついこの間まで、「持ってってくれないか?」と時々電話がかかってきたような車両です。現在、こんな状況ですから、これから車両を手に入れようったってほぼ無理でしょう。旧車とは中古車のことです。おフルです。そこには金属疲労の落とし穴が至る所に空いていて、全身の血管とも言える配線は痩せ細り、ジョイントは膝や腰のようにガッタガタ。タダですよ。本来なら。あぁ怒り心頭です。
というわけで、現在これらを所有していて、尚且つ、いい思いを一度もしてこなかった皆様に。この車両との付き合い方のノウハウを、多少語ることにいたしましょうか。毎度の事ながら前置きレベルです。あんまり役には立ちませんのであしからず。
途方に暮れた方々が少しだけ元気になれば幸いです。
マニュアルによりますと。
これですよ、皆様を惑わせているものの正体です。よく考えてみてください。そのマニュアルはどこに向けて書かれていると思いますか?広い意味で全世界に向けて、赤道直下から北緯40度くらいの間、至る所に撒かれている車両の諸元でしょう。しかも、大雑把に、こんな感じで出荷しときました。というものです。
これ、世界中で通用すると思いますか?まして高温多湿なニッポンアニッポンです。
なにより、その頃の高オクタン価なガソリンがもう買えません。エンジンは40年分やれているんです。こう考えるとき。マニュアルなんかによってる場合じゃぁないことは薄々勘づいてきているのでは?
そうです、全て現状合わせ、アクセルワークの癖、ライダーの技量に合わせなきゃぁダメだ。と、シバタがいいそうな気がしてきたでしょう。
皆様は少し誤解してると思うのですが、これに装着されているデロルトというキャブはメチャ繊細で、大雑把ではなくて、極論から言えばパイロットスクリュー4分の1間違えばまともには走りません。それは当然ツインエンジンですから、各気筒のシリンダーコンディションやヘッドの圧縮精度でも異なり。しかも、デロルトというキャブは個体差もあり、決して左右が同じではない。加えてキャブの内部の摩耗や、マニホールド密着レベルにも気を配らなきゃならない。そしてエキゾーストは、ノーマルなのかラフランコーニなのか?
どうですか、簡単ではないでしょう?そうです。マニュアルなんてのは気休め程度でしかないのです。役に立ちませんから本棚に仕舞っときましょう。
はじめに電気ありき
これは何かというならば、グッチやビーエムの発電装置の考えかたを知らなければ始まりません。
このダイナモはブラシが摩耗したり、レギュレーターがおかしくなったり。いずれにしてもバッテリーが上がります。その根本原因は、そもそも四千回転以下では発電しないのです。
日本の道路事情、そしてモトグッチやビーエムのオーナーの熟年度などを鑑みたとき。いつでもジェントル。いずれにしても品行方正な走行。つまりは年がら年中、充電不良。気がつけばバッテリー上がりとなります。
ここで考えなくてはいけないのは、発電してないってことは、大事なバッテリー電圧が、色々喰われ、場合によっちゃぁイグニッションコイルに12Vが行っていない可能性も無視できない。そうなるとどうなります。その弱い電気で、火花が飛んで、ちっちゃいスパークで、世界共通の変なキャブセッティングにパチパチ火を飛ばしているんです。聞いただけでも調子が悪そうでしょう。
まぁその通り、あなたがいつでもどこでも欧州のライダーのようにいつでも全開走行していないなら、一日で国境を越えたりしていないのでは。気がつけばあなたのグッチはバッテリーが上がっている。そうじゃないですか?まずは発電。素晴らしい電力をコイルに供給することがものの始まりであり、要するに燃えなきゃぁキャブも絞るしかなく。パワー感など出るわけがないのです。
ハートに火をつけて
ライトマイファイヤー。の基本は、コンタクトポイントの調整です。
グッチにはこのポイントというものが二個あります。それは左右のシリンダーが別のタイミングで爆発しているからに他なりません。じゃぁフルトラにしちまえ。と。かつて多くのグッチにダイナが装着されました。
このフルトラは実はブラックボックスであり、今何が起きているか視認できません。
フルトラっていうのはトランジスタ点火なんです。このトランジスターというものは、やはり経年劣化してコンディションが新品のままではありません。だからって中の状態はわからない。何をやってもうまくいかないグッチにもしダイナがついているなら、できるならポイントに戻しましょう。
なぜなら現在ダイナはものすごく値上がりし、おいそれと新品をつけられない。かといって誰でもポイントが入手できないことが状況をややこしくしています。
このツインポイント。相当きっちりと調整しなくちゃダメで、わずか2度ほどずれても左右の鼓動は揃いません。まず最初に厳密な点火時期調整。そこから行わなくてはキャブなどいくらいじっても仕方ありません。
現在あなたの車両がポイント仕様であったなら、それは朗報です。フルトラに変更しようなどとは夢ゆめお考えにならないように。かしこ。
そんなグッチなら
嘆くことはありません。
幸運にもこれらのグッチを走行させるための消耗パーツはほとんど手に入り。デロルトのセッティングパーツは40年前とは比べ物にならないほど手軽に入手でき。そのうえアイドリングから14.7V発電するオルタネーターだって買えたりします。
これら空冷2バルブルマン系に関しては、私はいつもこう言います「明日東北へ行ける旧車の顔した現行車」だと。
当店ではこの30年間、いつでもグッチに触れ続け、あらゆるセッティングをトライしました。それはキャブだけで400通り。一年365日。いつでもグッチに乗りながら。
今でも、普通に使える、パーツも買える旧車というのは、言い切るならグッチとビーエムくらいなのです。
あぁそれとハーレーだった。ハーレーに関しても何でも買えるし、どうにでもなる感じです。ただしインジェクション車はダメです。色々あるんですよここは。
スモールグッチを語り忘れましたが、簡単に述べるなら、あの車両に使われていた点火ユニットというものがほぼダメで、無論この部品はありませんから、調子の出ないイモラは、ずっと不調です。この辺はイタリヤの電装パーツの宿命ですね。
そうそう、インジェクションはなぜ駄目かでしたね。
これはデイトナ以降、V11あたりまでの話ですけど、この頃のコントロールユニットも、寿命を迎えていて、内部のコンデンサーが容量抜けを起こしたりしています。そのうえ電磁ポンプは壊れやすくフェールレギュレーターも壊れます。一番にフェールフィールターが詰まり、それ、ほとんど交換されていません。
デイトナ以降のフレームレイアウトにも問題があり。17インチを履かせるための強引なシャフトのシェイプは、パワーアップと相まって折れたりしますが、部品はありません。いわば過渡期のまま終わったのです。
これはやめときましょう。結構安いのは意味があり、いらないし治せないことを現在のオーナーは知っています。
そして現行車のグッチですが、これはアプリリア製で、ピアジオジャパンのディーラー様方が責任の上に管理していますから、当店が口を出す必要もかかわる必要もありません。ご相談は是非ディーラー様方へ。きっと期待に応えてくれますよ。
まだ少しも日常的メンテナンスについては語っていませんね。
もしその先知りたい場合。ぜひ来店していただき。シバタの能書にうんざりしていただき。それでもなを何とかしてみたい場合は置いていってください。これ、どこかで聞いたセリフですね。
