ノルカソルカ
- shibata racing
- 3月17日
- 読了時間: 5分
何事もチャレンジしなけりゃぁ始まらないのは世の常です。
とはいえ後戻りできないモディファイに乗り出すのは、それなりの勇気と、好奇心が必要なのです。

2025年3月17日
おそらく三人くらいの読者しかいない、このニュースペーパーですが。
そのわずかな読者の方々というのは、コアな方々。
これをやめると電話がかかってきたりしますから。この世の中にたった一人しかいない読者であっても、私はそこに向けて書きます。
先日、ほんのサラリと、自分のベスパのフライホイール軽量化のことを書いたら、すぐさま反応が何人かからありました。
こういう時、私は。
「んな余分なことすらっといいよ」と言います。
何事もチャレンジですが、後戻りができない、ノルカソルカのチューニングは、希少車でやらないに越したことはありませんから。悪くなる可能性のあることは、積極的にはお客様には薦めず。自分でやって、良否を確かめます。
以前私がチューニングしたベスパの一台が、昨年の夏に止まりました。
真夏にガッチリ走っていた時、エンジンがロックして、息の根が止まりました。
幸い少し間を置いてエンジンがかかったようなのですが、それ以来遅くなった。という相談を受けました。
「まぁ焼き付きだね。でもまたエンジンがかかったってことは、割と軽症だね」と私は電話ぐちでのたまいます。
ベスパの焼き付きの原因は、大きく分けて三つです。
まずはナラシの足りない状況で、全開にした場合。
混合用のオイルの悪さ、もしくは混合比の間違い。高熱によるオーバーヒートからの熱膨張。
この車両は、もう何年も前にエンジンを組みましたし、乗り手がそもそも素人ではありませんから、前の二つでは無いはずです。
真夏に焼き付いた経緯からすると、やはりこれは冷却の不足でしょう。
ベスパの慣らしは、エンジンによって違います。
まずノーマルは、4000キロ。マロッシは1000キロ。そしてポリーニも4000キロです。
マロッシは初めから馴染みやすいですが、終わるのも早いです。
ポリーニはキツキツですが、丁寧に慣らしをすると、ライフが永く。いつまでも滑らかさが持続します。
私のET3ポリーニは半年間。4800kmの慣らしの後。伊豆往復で600km完走した後に初めて全開しましたが、いまだに好調を維持できています。
「慣らし?30分だよ、とかは、ベスパには通用しません」

ベスパのシャラウドには、二種類あり、小さいやつが50Sのもの、お隣の大きいやつはET3のものです。
このエンジンは102cc仕様ですから、大きくなったシリンダーに対して、50cc用のままのシャラウドを使用していたことで、エンジン周りの熱が逃げにくくなってしまっていたのでしょう。
シリンダーをスープアップした場合、私の車両は、もれなくET3用に変更しますが、お客さん用の場合この限りではなく、ノーマルを使用することもあります。ET3のシェラウドは万年欠品で、あるときがゲットのチャンスです。
夏に激しく走ると。やはり熱には弱くなりますよね。

エンジンを開けてみたら、予想した通り。ガッチリ焼き付いた痕跡が、ピストンの対角線状四方向に深い傷をつけています。
こうなると理想はシリンダーアッセンブリー交換ですが。なにぶん予算の関係もありますから、ピストン研磨と、シリンダーホーニングでお茶を濁すことに。
これはいわゆる、抱きつき症状というもので、ピストンの熱膨張から一瞬シリンダーとピストンが焼き付き、リヤがロックして、その後また離れる。という症状で。エンジンが冷えるとまた掛かったりしますが。
何せ傷が入っていますから。元の調子には戻りません。
これをペーパーと研磨剤で、クロスハッチのように磨き込み。縦傷が入ったシリンダーは、ホーニングという作業を行います。
軽い症状なら、また調子を取り戻すこともあり。一応やってみる価値はある作業です。
いやぁ珍しく、技術解説してるよ。
当店は、一応それなりの技術っていうのはあって、ただツーリングばかりしてるオヤジのわけじゃぁありません。
今回の目玉作業は、やはりフライホイールの軽量化です。
これは旋盤を使用して、主に外周部を削って、慣性重量を減らします。
こうすると、速い回転上昇と、レスポンスが向上し、エンジンブレーキも弱くなるため、コーナーのアプローチが楽になります。
一方で、低速トルクが減少し、ズボラ運転ができなくなりますが。ここはさじ加減。
私の車両でテスト済みなので、どこをどれだけ削れば、問題ないかデーターは出ています。
研磨箇所は、表側の表面をやや削り取り、余分な肉をシェイプしたら、今度は裏側から外周部と、中のウエイト部分を削ります。
一番左の写真くらいまで、大体半分くらい削り込みます。手で持って振ると明らかに軽いです。
ここまでやっても、レーシングCDIのフライホイールより、重いですから。普段使いも問題なく、レスポンスだけが上がる仕様になるのです。
問題は、結構な大手間であるということ。
そして、嫌だったとしてももう元には戻せないということです。振動が増える場合もあります。
「んな余分んなことすらっといい」と私がいう時には、それなりのわけがあるんですよ。
で、結果は。
明らかにレスポンスは向上し。磨き込んだシリンダーは、スムーズな回転上昇を取り戻しました。
おそらく大型シャラウドの効果で、今年の夏はいけるんじゃない。
これに付随して、キャブセッティングは必ずやり直さなくてはなりません。
何せエンジンがあっという間に頭打ちますから。
こりゃ素人には乗れないね。
