春に立つ
- shibata racing

- 3 日前
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更新日:3 日前
いよいよ立春です。皆さまお待ちかねの春がやってまいりました。
我慢ができない性分ですから、じっとしていることはままならず、2月最初のツーリングはさてさてどこへ。

2026年2月5日
いつものように坂本湖へ向かいます。とはいえ今は2月。
この場所は新緑の頃から始まって、紅葉が終わるまで、まさしく軽井沢のシーズンを象徴するような場所です。私はことあるごとにここへ行き、湖畔を散策して癒されているというわけです。
しかし、この時期。バイクで碓氷旧道は、なかなかデンジャラスなんじゃないかと考えましたが、日中13度まで上昇する予報に気をよくして、真冬の軽井沢へ向かいました。
まぁ考えられないほどは寒くない。むしろ快適な朝の空気。
あれよあれよと横川の荻野屋まで到着です。すると、駐車場は人だかり、ちょっと入れない感じです。そこにいたのはドリル優子の名を授けられてしまった、小渕候補です。なかなかどうして、人気ありますね。
私はそんな盛り上がりを横目で見ながら、店内に入ります。お目当ては。「峠の力餅」というお茶菓子です。
小さい餅に、こし餡がたっぷり乗せられたお菓子は、荻野屋の開店時間に合わせて店頭に並びます。
まさしく作りたての力餅は、ここでしか食べられません。ワンパックこれを食べておくと、昼は有耶無耶になっても保っちゃいます。
しかし、美味いですねコレ。いわゆる団子ではなくてつきたての餅ですから、柔らかいし、絶妙なこし餡の舌感触。
私ほどのあんこソムリエでもコレには脱帽ですね。
静かな坂本湖。湖畔の奥は凍結しているようです。
落ち葉が氷の中に閉じ込めれれて、なかなか幻想的です。ところどころから炭酸ガスが上がっています。コレは湖底の腐葉土が出しているのでしょう。
すべて葉っぱが落ちて、明るい湖畔です。こんな清々しい感じは冬しか味わえませんね。
碓氷峠はほぼクリアですが、上の方3キロくらいは砂に混じって、凍土が表面に浮いているので、注意が必要です。
でも、なんとか県境をこえて軽井沢へ。

なぜこんな時期にバイクで軽井沢に来たのかというと。私の好きな室生犀星の文学碑に歌われた、「張りつめたる氷を愛す」という文句をこの目で確かめたかったんです。本当に前を流れる矢ヶ崎川の流れが凍るのか?
犀星は、凍れる水を愛するがため、この場所に歌碑をたてて、その下に可愛がっていた猫の「カメチョロ」の亡骸を埋めたと云います。多分自分もここに眠るつもりだったんでしょう。この凍れる水の辺りに。
夏に来た時とは全く違う静かな空気です。夏は蝉の大合唱です。
水の流れはフリーズして、音は消えます。微かに氷の中から新しい息吹のような水の流れが生まれています。
「私も氷の奥にあるものに同感す」ですよ。
もうひとつの軽井沢のお楽しみ。デリカテッセンでハムを買って帰りたかったのですが、例によって木曜は休みでした。
ふと思い立って、旧軽銀座のミリタリーショップに行きます。私の冬用のバイクグローブは数年前からここの軍物を使用しているんですが。これが良い。
もうね、コレを使っちゃうと他のやつは使えません。柔らかいしあったかいし、操作性もいいし。ただこのグローブ。普段は売っていなくって、厳冬期に来ないと置いてありません。さあて今年はどうでしょうか?
バイクを店に横付けして、グローブをはめたまま店内に乱入します。
「冬にくればあると言われたんで来たんですけど、コレとおんなじグローブありますか?」
ここのオーナーさんとは何年も、一年中何かしらなじみですから、私も遠慮がありません。
「あぁコレかなぁ」と出してくれました。なんとラスいちでした。
「そうそうコレコレ」現在のものがだいぶやれていましたので、購入できてラッキーでした。これでまた数年は心配ないでしょう。
しかし、真冬の木曜日だってのに混んでるなぁ。と思ったら、ああそうね春節なのか。やっぱり来ているわけですね大陸の皆さま。
なんとなく昼を食べそびれましたが、まぁいいか。寒くならないうちに下山しましょう。帰りはバイパス降ります。
しかし、車いないなぁ、バイパス貸切。降りながら考えます。
「荻野屋で釜飯?高いよなぁあれ。じゃぁ食券買ってあのラーメン?やだなぁ」なんて考えていたら、バイパスも終わりに近づいて、ふと道端の食堂が私を招き入れます。
この店。もう軽く40年はあります。私が初めて軽井沢に行った頃もありましたが、かつて一度も入ったことがありません。でもなんか今日は呼ばれてるなぁ。
ままよ。とばかりに2時ですから、店を選んじゃいられないでしょう。山形屋さんというお店に入ることに。
ガラリと入ると、奥にあるダルマストーブの前に、老人が二人。おおよそ80代と思われます。
するとおばあさんの方が「いらっしゃい」どうやら店の方のようです。
コレはヤバい店に入ってしまったかもしれない。壁のメニューをざっと見て、「中華そばください」と注文します。
たとえ不味かったとしても、中華そばなら最小限のリスクと考えたのです。
「中華そばだよ。」お婆さんが隣の爺さんに云います「中華そばだって」もう一度言うと爺さんはのそっと立ち上がり厨房に消えます。
おばあさんも立ち上がりお茶が出ます。
「コレはまずい展開になってきた、ほんとに出てくるんだろうか中華そばなんて、だって今から鍋に火をつけるんだろうが」
しかし、まあコレもさだめと腹を括って、中華そばを待ちます。
おおよそ10分。店には私と婆さん二人です。テレビは大雪で倒壊した家屋のニュースをやっています。ものすごく重苦しい空気の中、お婆さんがお盆に乗せて運んできます。
「おお、結構どんぶりが大きい、深いぞ」目の前に出されたそれは至ってシンプルな屋台系のラーメンです。
まさかヌルかないよなぁ。と思いながら恐る恐るレンゲでひとすすり
「おぉ!なんだこれは熱い。しかも舌が焦げるレベルのラードが溶けて、ガッチリと美味いじゃないか」味はいわゆる優しい味。
って言ってもテレビのグルメレポートで、言葉がなくていう、味気ない優しさではなく。全身から滲み出る、人柄が現れた優しさに包まれたなら。
「おおチャーシュウが分厚いぞ。なんだこの肉。本物じゃねえか」いわゆる定番の鶏がらスープはクセがないけどすっきりと旨い。
いやぁ参りました。
「大変美味しかったです」と支払いの時おばあさんに言うと、「当然だ」と言わんばかりに「そう。あのタレねぇ私が一から作ってるから、りんごとか色々入ってるんだよね。チャーシュウもね、結構みんないうね」
「いやぁそうでした、チャーシュウがまたなんとも美味しいですね」
「市販のやつは薄くってダメね、やっぱり作らないとね」
料金は今時500円。ワンコインのお釣りが来ました。
この大幹線道路のわきで40年以上看板出すってことはこういうことなんだな。
と何か妙に納得して。「またきます」と挨拶を交わして家路につきました。
ほんとだよ、おばさんが元気なうちにオレはまた行くよ。



