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あいてのことを思うとき

  • 執筆者の写真: shibata racing
    shibata racing
  • 7月9日
  • 読了時間: 4分





遠藤周作ほどエッセイのうまい作家はいないだろう。

このカソリック信者の作家は、体が丈夫では無かった。しかしその、時に力強く、そしてユーモアに溢れた文章は、読み手に力を与えてくれる。


このエッセイ。46年の間、発見されなかった。書いていたのは入院中の頃。これは手紙にまつわるハウツゥーとでもいえるものだ。


重要なのは、常に相手のことを考えること。

手紙をもらった相手がどう考えるか?書き手の心中を押し付けていないか、それは簡潔か。ぐだぐだとナマズのようではないか?

なかでも異性に宛てた、いわゆるラブレターの書き方にはかなりのボリュームを割いている。

それは書く側の男の手紙。それをやんわり断る女性の手紙にも言及がなされている。


「こんなこと書かれたら困ります二度と書かないでください」とは書かず「少し両親なども驚いてしまうから、嬉しかったけど、また仲間の関係で挨拶しましょう」などと言えれば、突然刺されたりもしないに違いない。

刺したりする男は絶対ダメだけれど、被害者に落ち度があるとはいわないが、アイドル殺傷などの裏側に、その気にさせたアイドルの、こうした配慮が少しでもあれば....。とは感じてしまう。刺しちゃ駄目だけどね。


彼は読者に質問する。この空いている箇所に言葉を当てはめよ。

答えは「読む人の身になって」と入るのだけれど。これがわかっている人はこれ以上読む必要なし。古本屋にこれを叩き売って今川焼きでも買った方がよろしい。と自虐するが。10ページはあっという間に読み。飽きないうちに読み切ってしまった。面白すぎて。


手紙に限らず、書き物というのは得てして独りよがりになりがちである。

私のこのコラムなども、いったい誰が根気よく読んでくれているのだろう?とは考えるが。一人に向けては書けないから、それはそれで難しい。

しかし、手紙となるとたった一人に向けるわけだから、読み手に全振りするというのがエチケットに違いないが。これがどうして、往々にしてラブレターなどは酔っ払ってしまって。自分の気持ちばかり書くことになる。

私も過去、なん100通も失敗ラブレターを出した経験があるから、身にしみてわかる。すべてが玉砕だった。


遠藤周作は、その場合をふたとおりに分けて説明する。

すでに少し相手に気があるか、またはまったくないか。という例を出して。

少しでも気があると思われる場合は、できるだけ相手のチャームポイントなどを軽く褒めて、「そんな小さいこと見ていたの、あなたは」と。驚かせることで、今まで小さかった萌芽を開かせる可能性を生み出す。

また、少しも気がなかった場合。ただのキモい男と思われる可能性があるからけして深追いはしないこと。


つまりはジャブを打ちながらも、男本位で、相手を包囲するような手紙は書いてはいけない。

やんわり断られても、それ以降の関係性がギクシャクしないゆるさを残しておく。

相手は少しだけ「わたしにたいしてそういう気持ちをもってくれた人」として悪い気はしないし、覚えているもの。ともいう。


そのほかには、いわゆるお祝いの挨拶や、お見舞いの手紙など。無神経な例をいちいち出しながら、これのどこがいけないかを解説してゆく。

なかでもお見舞いの手紙に関しては、彼が入院中であったことを知らされるとリアルである。

「自分は元気だが、君は気の毒だ」というスタイルが一番気持ちを逆撫でする。

もっともいいのは「いま君の好きだった酒を少し飲んでいるよ。よくなって一緒に飲めるように少しだけ残しておく。早くよくなれ」なんていうお見舞いが嬉しいとも書く。

身内の不幸や苦しみはわかるはずがなく。わからないけれど。「自分にもそんな経験があったけれど、時が癒してくれました」なんていわれると、相手の気遣いを感じる。とも。



これを読む皆様は、手紙を書いたことがあるだろうか?「私はどうも苦手で」という人ほど、そのままの率直な気持ちを書けばいい。「私はあなたをこれくらい素敵だと思ってますよ」とできるだけ簡潔に書いて。相手に逃げ場の余地を充分にのこす。けしてキザな言葉は使ってはいけない。素のままの自分で、汚い字でも構わないから。

皆様、自分の胸に手を当てて考えていただきたい。「読み手の身になって」書いてましたか?


現代は、大メール時代であり。ラインというものがコミュニケーションの手段らしい。

らしいというのは、私はメールもしないし、携帯電話もないからラインというものもしたことがない。いまだに気持ちは手紙で伝えている。

電話というのもなかなか味気なくて、これは一つ間違えば決定的な破裂を生んでしまったりもするから注意が必要だ。


どうだろう皆さん。本日この時から、ライン、メールをする時に少し踏みとどまって、読み人のことを考えてみるのは。

よく、「夜に書いた手紙は出しちゃダメ」なんていわれるねぇ。

たぶんだよ。この一瞬の考察によって、今まで以上に人間関係は円滑になるんじゃないだろうか?


と。メールをしない私が言う。

 
 

Appia . mecccanica - Shibata ~ Racing

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