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エキスパートの憂鬱

  • 執筆者の写真: shibata racing
    shibata racing
  • 4月30日
  • 読了時間: 4分

更新日:5月2日


あらゆる趣味の人口が減少しているようですね。ユーザーの高齢化もあるでしょう。

それはオートバイでも然り。しかし、どうやらそれが原因ではないようなのです。その問題に斬り込みましょう。





2025年4月30日



先日、釣りとゴルフを、かつて趣味にしていた方のお話を聞いて、全てが腑に落ちました。

今は両方やめてしまったようでした。それは年齢のせいでしょうか。どうも別に原因があります。

簡潔にいえば、ビギナーと差がつかなくなったから。ということです。


例えば、今のゴルフクラブは、誰が打っても、飛距離が変わらない。そのクラブの番手通り。

当たれば飛ぶし、同時にそれ以上は飛ばない。

ワカサギ釣りのダイワのコンピューター制御のリールは、勝手に上がり下がりして、その餌の動きは、エキスパートが長年かけて習得した手の動きそのもの。当然セットしておけば、誰でも勝手に釣れる。

ということでした。


これは写真業界でも、映像業界でも同じで。

今の機材の売りは、AI技術によって、誰でも普通に撮れる。つまりは難しいものは敬遠されるそうです。

これはバイクも一緒です。


先日衝撃ニュースだった。ホンダのノークラッチ大型バイク。や、いずれ二輪にも来るだろう自動運転。

これら全てが、エキスパートと呼ばれた方々のやる気を削ぐ要因となっているようでした。


ここに目をつけたメーカーは、いわゆるニッチと呼ばれますが。唯一無二の存在感を放っている。

とも言えるでしょう。


では、ベスパというオートバイを例にとりましょうか。

まず、始動からノウハウが必要。

その日の気温と、湿度を計算に入れて、チョークの弾き具合を加減します。かかっても、油断できません。どのタイミングでチョーク戻すか、全てライダーに委ねられ、失敗すれば、その後の走行に支障が出ます。


走り出しても、一筋縄ではいきません。

効かないブレーキに、存在しないかのようなサスペンション。全くホールド性のないシート。

いわゆるライディングというものと、乖離しているような感覚すらあります。

しかし、これをまるで手足のように扱い。目を瞑ってでも走れるようになるには、相当の修練が要求されます。

今あるバイクでも、ベスパほど、ビギナーと差がつくバイクというのも珍しいでしょう。


かつてオートバイというものは、それほど修練を必要とした乗り物だったのです。それもつい最近までは。

今は、大袈裟に言えば免許をついさっき取ったビギナーでも、バレンティノロッシュと見間違えるレベルの走りが可能です。無論、とまる、曲がるは、その中には入っていませんが。


例えば旧車を乗りこなしたライダーが、息子とツーリングに行きます。

先月免許をとって、CBR250RRを買ってあげました。

「今日はお父さんが見本を見せてやるから、いいか無理するなよ」と言って得意の下久保ダムへと連れて行きます。


コーナーを二、三個過ぎて、お父さんは「まあついてこれないだろう」とミラーを見ると。全く離れていません。

その先、頑張りますが、結局息子は涼しい顔で、後ろについていて。お父さんは冷や汗で一休み。

息子はプレステで鍛えていました。

この話。笑い事ではないはずです。


ただ、ここに落とし穴があります。

若い彼は、タイヤが摩耗した時や、路面が薄く濡れている時などを、いずれ経験するのです。

今日よりはるかに上がったペースの状態で。

こちらも笑い事ではないのです。


私が提唱するのは、

「ビギナーこそ大変な思いをしろそこで得た創意工夫は、いずれ自分を助けてくれる。」です。

そしてお父さんにもひとこと。

「そう落胆しなさんな。今まで怪我もなくやってきたあなたは、真のエキスパートですよ。」

無事これ名馬というじゃありませんか....。


釣りやゴルフや、バイクなど。この後もし続けるとしたら私からアドバイスです。

競争心を捨てよ。誰もあなたのノウハウは盗めやしませんから。

スティーブ・ジョブスが、瀕死のアップルに呼び戻されて、最初に作ったコマーシャルは、商品の紹介がありませんでした。

そこにあったのは、「とびだせ」ということだけ。

世の中の常識から外れた場所にだけ道ができる。というメッセージでした。実際当時のアップルは尖ってましたね。



そんな現在、ひときわ飛び出したカメラ&レンズのメーカーがSIGMAですね。

彼らのメッセージは、「簡単な気持ちで近づいてくれるな」です。

「しかし、もしこれを手にしたエキスパートには、最高のパートナーとなり得るでしょう」というものです。

何かを取るなら何かを削る。そうしなくちゃ真の機能美は生まれない。

多分売れないかもしれない商品だけど、歴史に残るとはそういうことですよ、きっとね。


あぁそんなバイク、新車で出ないかなぁ。


こちらはプレゼン動画ですが、ほとんどの方には意味不明でしょう。しかし、どんなものでも、この程度の基礎知識は必要で、だからこそエキスパートへの道の険しさもよろこびに変わったはずです。

初心者に迎合することが全てではありません。なんらかの商品を売りたいと願う方の、参考となるでしょう。


 
 

Appia . meccanica - Shibata ~ Racing

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