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オーディオ概念

  • 執筆者の写真: shibata racing
    shibata racing
  • 4月24日
  • 読了時間: 8分

更新日:4月26日





近年、若者がアナログ趣向になっているという。これは、もはや行き過ぎたデジタルに対し、強烈なアンチテーゼを表明した、変革期ともいえるかもしれない。


レコードが新たに発売されて、中古品が高騰している。

これをもう何十年も前に提唱した私にとっては、当たり前の事象であり、嬉しくもある。「なんか裏返したりする手間が楽しい」と、若者は言う。


一方で、自称コスパ大王みたいな我々世代がいる。

レコードや、書籍という。そもそも物体を呪っているかのように、全てをパソコンや電話に詰め込み、その中だけで人生を謳歌している昭和生まれの、ハイレゾ人間とでも言おうか。

この点においては、若者の方がずっと前向きで、自身の感性に素直に反応しているように思う。


ハイレゾ人間は、もう自分の人生が少ないことを知って、片付け始めているのだろうか?「私はもう随分やりきったから」と、自分がもう音楽という娯楽に関心がなくなっていることを、あたかもコスパの良い人間であるかの如くに誇っているさま。

中でも、オーデイオと言われる分野においては、誤解があると思える。

まだ少しでも、音楽を聴きたいという余力が、皆様の中に残っているのなら、もう一度オーディオを信じてみても良いかもしれない。


JAZZ喫茶が始まったのは、戦前戦後を挟んだ頃。各家庭にはポータブルプレーヤーすらない時代に、ましてや、生演奏などを聴くことは到底叶わない。そんな庶民の夢を叶えたのが、JAZZ喫茶という、薄暗い狂った空間だった。

そこは、タンスのような大きさのスピーカーから、「これぞ生演奏」というレベルの音量が競われた狂乱の時代だった。


始まりは純粋に音楽を追求したようだが、その終焉の頃には盛んに、音比べ合戦の様相となっていた。つまりはそこにいくら注ぎ込んだかが重要なような。最後はカートリッジの針のダンパーについて語り合うような。

これはあらゆる趣味の分野においても、最後にかかるもっとも重い病気なのだ。

オートバイも然り。

本来アクセルを捻るだけで、秩父まで走っていけてうれしい。そんな移動手段であったはずが、デザインや、ブランド。最後は希少価値にその評価基準が置かれた。


当店は本来バイク屋なのだが、こと、希少性という話題で話をするつもりは全くない。

私がお客さんに振る話題の中心は「君はそれを使ってどこに行くんだい?」という問いだ。


話が傍に逸れたが、ではいよいよオーディオ本題だ。

まず大前提として、音楽は自分が信じる機材で聞けば良い。それは電話だろうがなんだろうが。

しかし、どうにもオーディオという文化はややこしい。それはまるでグルメのように、ニュアンスを語ったり、変化を語ったりする。

言い切って仕舞えば、こんなどうでも良いことに全財産を費やしているほど人生の浪費はない。


では、もしも、ここからオーデイを始めたいと考える殊勝な善人が残っているなら、ということを前提にここからは、私が50年これに費やしたノウハウを一瞬で授けてしまおう。

まず、リサイクルショップで、中古のマックを、一万円くらいで買ってくる。そこに、もう諦めた手持ちの一番お気に入りのCDをリッピングする。この際、アップルロスレスというデータの小さい高音質なリッピングで読み込む。10年落ちのマックでさえ、CD一枚分なら3分くらいで全て読み込めるはず。そして、新品で購入できるパワードのモニタースピカーをこれまた2万円くらいで購入する。これで完結だ。そこから出てくる音は、皆様が今まで聴いたことのない、手持ちのCDから出てくる最良な音だろう。


マックの部分は、アイフォンでもマックブックでも、iPodでも良い。これらをすでに持っているなら、スピーカーだけ買えば完結だ。

無論ネットワークオーディオプレーヤー、ウインドウズなどでも良いが、なぜアップルなのか?は聴けばわかるだろう。

とにかくブツを回さないで音が出ることが基準だ。デジタルエラーというものを、皆様は軽視し過ぎているように思う。


ここでの作業を簡単に説明しよう。

まずパソコンに一回読み込むことで、データ化された媒体は、もうクルクル回らずに、隅から隅まで、そこに詰め込まれた音粒を再生できるようになる。それをマックのヘッドホンポートから取り出すと、マックが最適にデジタルからアナログに変換してくれる。これを業界用語でDAコンバートという。このアルゴリズムは、日々進化したものの、マックでは10年くらい前に行き着いた。

出力設定は48kh24ビットで出すことが望ましい。44.1khのCDでも、なぜか力強い音が出てくる。

ハイレゾ音源などは、金輪際買わなくて良い。


そして、パワードスピーカーというものは、ウーハーに対して最適化されたパワーアンプが仕込まれて売られている。条件としては、業務用のパワードモニターというカテゴライズで売られているものをチョイスしなければならない。これについては考えず、そうしてもらいたい。

で、肝心の音量は、マックに入っている音楽再生ソフトの、ミュージックという画面の脇にある音量で調整する。この時、パワードモニターの音量は、12時にセットする。

再生機器の基本で、アンプはフルパワーの中間あたりを使用すれば、最もストレスフリーであるということは、バイクで高速を走行している時を考えれば理解しやすい。これを歪み特性という。


これだけである。おおよそ3万円投資すれば、考えうる必要にして十分なオーディオ環境が手に入る。この音はもはや、既存のオーディオマニアが、40年追求して、家一軒借金の抵当に入れて、それでも到達しえなかったホームオーディオの最良のバランスと言える。


さぁここからは全て余分なことだ。

もっといいインターフェースで、もっといいアナログ信号を取り出すとか、別にプリアンプを使うとか、もっと大きなスピーカーを鳴らしたいとか、これら全ては音楽鑑賞ではなく、利酒大会の領域だと断言する。しかしながら、ここまで全否定しながら、オーディオという世界には、見た目や自分の好きな音。とかいう嗜好の領域が存在することも否定できない。


「自分の音」という傲慢な再生手段。

ただし、本当の音を聞きたいわけではないファンにとってはそれこそが求道になってしまう。ここに気づいているなら問題ないのだが、何か一つ変えたら同じレコードの同じ箇所だけを聞き直して一喜一憂することに人生の大半を費やすなら、本来あるべき世界中の音楽を聞き倒す。という目的からは大きく離れてしまうだろう。

ただ何事も自由であり、自分の気に入ったデザインやブランドの機材を眺めながらグラスを傾け、揺れるVUメーターに人生の機微を映すことに喜びを覚えるのも、また音楽鑑賞のスタイル。それを否定するものではない。



音楽を聴きたいのか、音を嗅ぎ分けたいのか、君はどっちなんだ?それとも視覚から。




では、現在当店の工場でラジオがわりとして音楽を流している再生環境を説明しよう。興味がある方だけ読んでいただきたい。

これは大前提として、20年前に自作した、アルテックのスピーカーを活かすためのシステムだということ。アルテックには612cという伝説の同軸モニターがある。そのサイズは38cmウーハーのセンターにツイーターが蓋をするユニットだ。これは通称銀箱というスピーカーと同じユニットを使用する。このサイズは巨大であり、しかも38cmを鳴らすと、近所迷惑になる。

ここで当時私は考えた。家庭サイズで最適な20cmウーハーの同軸ユニットはないか?それが408aというギリ新品購入ができたアルテックランシング最後の現行モデルだった。


まずは本家の612Cの設計図をアメリカのアルテックマニアのサイトから入手して、そのまま20cmウーハーサイズにダウンサイジングした設計図を手書きで書く。私は製図の検定を持っているので、手書きの製図が今でも書ける。CADはやったことがない。

材料は米松の合板は入手困難なので、MDFボードという近年のスピーカーによく使用される材を使う。もうこの時点で、アルテックの音はしないわけだが。素材カットのためには丸鋸の購入すら躊躇わない。

内部は凝っていて、本家にはないバックロードホーンの形状が設られて、その角は、全て丸めることでタイムドメイン理論を実践する。

追加の機能としては、ツイーター横にコンデンサーを追加して、高域の癖をコントロール。

試聴を重ねた末、内部にはクロスオーバーネットワークを組み込んで、セパレートした。これはクラリオンの店舗用スピーカーを分解して、剥ぎ取ったユニットを中に入れた。この効果は、一気に自作スピーカーのフェーズを完成に近づけることに寄与した。


塗装は限りなく612Cを踏襲したグレーを作って刷毛で塗る。スピーカーケーブルは50年代当時のオリジナルウエスタンエレクトリックの20Gをユニットから直接裏蓋にドリルで穴を開けて外に出し、片側で1.5mに設定した。赤い布巻きのケーブルがアルテックらしき雰囲気作りにひと役買う。

ここまで読んでいただいた方は、もうお腹いっぱいだろうが、でもその先に続く。


この出力96dbのスピーカーを効率よくドライブするためには、それなりのパワーアンプが必要になる。

そこでチョイスしたのは中国製のクラッシックプロの45wだ。値段は現在2万円。音源は20年前に新品購入したマックが、いよいよ使い物にならなくなったので、音楽再生専用機としてセンターに鎮座した。あいだにはオーディオインターフェースというものを繋いで、パワーアンプに+4dbのバランスで出力されている。


これらほとんどが廃物利用と言えるものだが。ここがオーディオのオーディオたるところ。そこから出てくる音はまさしく私が苦心惨憺してたどり着いた音とも言える愛しい音。純粋な音楽鑑賞の枠を超えた、身内感覚の自分仕様。そういう面がオーディオという趣味にはあるので、正しい音などはそもそも存在しないのだ。正解は「俺が決める」


では、またこれみたいなものを制作して、綺麗な目をしたファンに売りつけるだろうか?私はそれはしない。これだって、作ってしまったので、捨てるのも忍びないから使っているに過ぎず、私の目はもうとっくに覚めている。2万円のパワードスピーカーのほうが良いと。


このユニットは一年中風と埃にさらされ、音楽は風に舞い。そしてどこかへ飛んでいく。これすべて日常のワンシーン彩りとして。


 
 

Appia . mecccanica - Shibata ~ Racing

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