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ヒトにすかれる法

  • 執筆者の写真: shibata racing
    shibata racing
  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

更新日:2 日前


昔の彼に会うのなら、という歌があります。「少し離れて歩くなら、暑い風吹く方がいい。」とうたわれるデート歌ですが。

最近の陽気は、外で会ったカップルは、間違いなく別れるほどの熱波です。



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2025/08/06



82年のこと、まだ車の免許を持っていなかった私は、誰かの車に乗せてもらって移動するというのが当たり前でした。その年、女子の車は当然のように。アンテナを張ってる男子の車でも、必ず流れていたアルバムは、ユーミンのパールピアスでした。

この夫婦は、このアルバムから路線を変更し、より電子音楽へと向かう入口となった記念碑的なアルバム。従来からのファンが付いてきた最後のアルバムだったように思います。


このユーミンは、荒井由美時代からのファンが最もコアで、バックバンドのキャラメルママのピアノ弾きが、旦那になり。その後ふたりで、いわゆるユーミン路線をひた走ることになります。そのきっかけとなった「パールピアス」は、ファンは勿論、そうでもない人まで買って聞いていたのが82年です。


家には荒井由美時代からのレコードがあり、いやでも聴く機会がありましたが、この人のデビュー当時のアンニュイな歌声は独特でした。無論曲も詩も良かったのですが、もうひとつマニアックでした。私が思うには「あの日にかえりたい」以上でも以下でもない。というのが最終評価です。この映像では、私の嫌いな細野が。珍しくギターを弾いてる、けっこうレアです。


パールピアスは、当時のAORサウンドを巧みに日本で取り込み。今聞くとデヴィッドフォスターだったんだな。とわかりますが。その時は「いやぁユーミンおしゃれだわぁ」くらいに18歳の私は感じている素直な良い子でした。


美術学校の学科が別だったのですがNさんという同い年の女子と、よく話す機会がありました。

その時、男子の友人の、この人をマッチとしておきますが、そのマッチがNさんのことが好きで、Nさんと仲良しの私に、デートをコーディネートしてもらえないかと、相談がありました。

Nさんのタイプは小柄で、ヒトミトイをこのまま20歳くらい若くした感じのプラチナ美人でした。


当時は勿論家に直接電話ですから、お姉さんが出ました。「えっとNさんに代わっていただけますか?」少しして「なんじゃい」とNさんが電話に出ました「あのさぁ簡単にいうと、マッチがさぁ今度一緒に夏休みに軽井沢に行きたいんらしんだけど、どう」

無言で沈黙してます、どうも気まずい雰囲気です。

「えぇ?.....ふたりでなのかなぁ」「それにさぁなんでそんなことシバタ君が言ってくるかなぁ」となにやら悩んでいるようです。

「じゃぁさぁシバタ君も行くならいいよ」と、ひょんなことにお太鼓持ちが一緒に参加で、謎の3人デートとなりました。


マッチは基本とても良い人で、私も好きでしたし、Nさんも同じクラスですからマッチの人となりをよく知っていました。

マッチの愛車は310サニーのクーペで、ソレックスキャブが。ガウガウいってるような走りの車です。当然狭いリヤシートに私が乗り、軽井沢へ向かいますが、当時の夏の軽井沢は行くも地獄、いるも地獄、帰るも地獄。の地獄揃い踏みです。

よくクリスマスのディズニーランドに行くとカップルが別れるという話を聞きますが、まだカップルにもなってないデートで、夏の軽井沢に行くというのは致命的でした。


マッチは何があっても優しく、気遣いもしますが、何せ大渋滞ですから、険悪にならない方が不思議なのですが、Nさんの性格がすこぶる良いので、救われました。「なんか音楽聞くか」とマッチが午後に霧が出た軽井沢プリンス通りでつぶやきました。「あたしカセット持ってキタァ」とNさんがおもむろに出したのが、ユーミンのパールピアス。市販品のカセットです。

プリンス通りわずか数キロの移動で、裏表、二巡してしまいました。まぁ一時間半ですよ。霧が窓からうっすらと車内に入り込み、少しひんやりとして、前は何も見えない中、ユーミンの声だけが車内で唄います。

結果的に朝から夜まで、引き回したような初デート、余分な男付きですから、うまく行くはずもなく。その後付き合ったという話は聞こえてきませんでした。でも私は、とことんいい人のマッチが、女子から見て少しも面白くなかったんだな、と思ってます。


経営の神様、松下幸之助が、人を雇う条件に、悪口を言わない。物事を進んでやる。マイナスの思考を持たない、などの人材を取るのだと言っている話を聞いたことがあります。

「人に好かれる法」という書物があり、その中にはこう書いてあります。

いつも朗らか。裏表がない。不平不満をいわない。人のことも詮索しないが、自分のことも話さない。

ただ私は、こういう人が人に好かれるに値する人間なのかは疑問が残ります。


不平不満をこぼさないことが時代切り拓けるのか?熱狂しない熱の薄い人間が活発な意見を言えるのか?

これって、先ほどの松下幸之助の採用する体温が感じないような、社畜そのものじゃないだろうか?それが今のパナソニックを産んでしまったのではないだろうか?ちっとも面白くない、サザエさんのような会社ですよ。


悪口は本人の前でも平気でいう。物事は姿が掴めるまで手を出さない。マイナスの思考からしか出発はしない。石橋は叩いても納得できなければ渡らない。私はそんな人生をもう30年、商売上では実践し。綱渡りのようにギリギリやっています。

これが性分ですからしょうがないですよね。

小綺麗で爽やかで、優しく、女子に気遣いをしたマッチのことを思うとき。そういう男に未来を預けられないと考えたNさんの心情を考えた時。そんな苦い思い出と共に、このパールピアスをもう40年聴いている私。さまざまな悔恨とひらめきをかさね、ひとは大人になってゆく。過ぎたるは及ばざるが如し、及ばざるは過ぎたるより幾らかはマシ。

私はあの時どうするべきだったのか?と、いい人すぎた自分を顧みて、私の最初のブローケンハートだったのかなぁ。

現在。嫌われて結構な人生を歩んでいる自分を鑑みて。


その時の反動ですよ。きっと。


 
 

Appia . meccanica - Shibata ~ Racing

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