雨の音を聴く
- shibata racing
- 5月2日
- 読了時間: 5分
更新日:5月10日
五月雨なんていう言葉の通り、五月に入るとすぐに、激しい雨の朝を迎えました。道ゆく自動車は少ないような、慌ただしいような。やはり普通の平日ではないんでしょうね。

2025年5月2日
明日からいよいよゴールデンウイークも後半戦に入るようですね。
朝から雨の金曜日。子供たちは学校へ、大人たちは連休前の慌ただしさで、道ゆく自動車の勢いも忙しない感じです。
こういう日は、誰も来ないですから、私は静かにしています。
朝の喧騒が終わると、なにやら静かになり、雨が色々のところへ当たる音が、良く聞こえます。
おや、あの音は、壁にあたる音か、屋根を叩く音。のきに垂れる滴。
音を聞いていると、雨の姿がカタチとなって現れてきて、私を飽きさせません。
今年は皆様も、世の中の景気が芳しくないですから、あまり大胆に出て歩かないようですね。
高いなら高いなりに、予算がないならないなりに。楽しむ方法は色々とありますから。
私のように本当にすっからかんですと。雨の音ですら想像を巡らす手段となりますから、人間気持ちの持ちようで、楽しく暮らすことはできるものです。
最近、前橋にもIMAXシアターというものが出来ました。
これは映画館の中でも特別なスクリーンと、座席や音響に凝った劇場を言います。
そこにはIMAX専用の4K映写機が導入され、恐ろしく綺麗な映像がかけられるようです。
今なにやってるのかな。と興味津々で上映作品を調べたら、名探偵コナンだって。
来週からは鬼滅の刃だって。
せっかくのシアターで上映するのがこれですから。お客さまの映画館離れも仕方ないでしょう。
クリストファーノーランという映画監督がいて、この方は常識を逸脱した映画制作で有名です。
彼がIMAXカメラを製作の現場に持ち込んだのが、2008年の「ダークナイト」からでした。
カメラは一台五千万で、世界に4台しかなかったのですが、そのうち一台をカーチェイスで潰しました。
無論カメラを貸した側は卒倒しましたが、ノーラン監督はひとこと「フィルムが無事でよかった」この神経。
このこだわりのカメラ重量は50kgでしたが、それを肩に担いで、動き回ります。レスラーのようなカメラマンがです。オープニングから空撮で見せる映像美。やっと時代が追いついて、その凄さが最近わかりました。当時はジョーカー役のヒースレジャーばかりが話題の中心でしたが。
そこまで予算をかけても、苦労をしても。
そのIMAX映像が見られる映画館は、全米でも、当時は2館だけだったと言いますから。誰もわからなかったのです。
普通ならですよ「どうせちゃんとした映像で見れないんだったら、そんなに拘らなくてもいいか」と考えるんです。
当時は4kなんてなかったしね。
しかし、本当の芸術家というのは、今なんか見ちゃいないんですね。二十年後とか五十年後とか、いずれ時代が追いついた先のことを考えて、現在可能な世界最高の方法論でものを作ろうと考えるんですね。
そして、やっと20年後の今。我が前橋にもIMAXシアターが出来て。上映しているのが名探偵コナンですよ。
これが大衆です。
私はクリストファーノーランの「TENET]を見た後に、我が郷里の師匠、小栗康平監督の「FOUJITA」を見ます。
予算の違いはありますが。二人とも少しも違いはなくて、その時の最高を目指している姿勢が感じられて、感動します。
ノーランがアメリカの暗い夜を描いたとすれば、小栗監督が描く日本の夜は静かです。
戦時中空襲を避けて田舎に疎開した藤田の住む農家には、教師をしている息子がいます。
その後取り息子に、2度目の赤紙が来た夜の事。
澱んだ暗い食卓で、息子役の加瀬亮さんが村の伝承を話し始めます。
村のある一軒家に毎夜、戸を叩くものがいる。
これはきっと狐の仕業に違いないと、家のものが時間を尋ねます。狐は刻を知らないからです。
「いまなんどきじゃ?」すると少し間をおいて「トキハ.....トキヨ!」という返事が返ってきた。という笑い話です。一瞬、食卓に笑いがおきますが。横でなにも言わずに聞いていた母親が。
「還ってこい......死ぬなっ!」とつぶやきます。これが日本の闇の描きかたですね。
日米の巨匠に共通しているのは、「ものごとに全力だ。」ということでしょう。
現状を嘆いているくらいなら、最良の人生を歩むことを模索しましょう。今できる最高のことを。
とはいえ無理せず気楽に考えればいんですけどね。
そんなゴールデンウイークも私は嫌いじゃありません。
日本の業界の悪いところをいいましょうか。
音楽でも映画でも「どうせ電話で見るんだからわかりゃぁしない」という意識で制作されているところです。
そういうものは、鑑賞する側も電話でしか見ませんけどね。
私があらゆるモノを作るとき。
「電話で見てくれるな」と思って全力で作ってますね。たとえそれが一銭にもならなくても。
二十年後の誰かに向けてね。
そうじゃなくちゃ、クリストファーノーランと小栗さんにたいして恥ずかしいじゃないですか。
互いに同じ人間だもの。
IMAXでアニメなのかと散々いっておきながら、これを紹介もどうなのかとも思いきや。
ジブリ最後の手書きアニメを、縦26mのスクリーンで見ることを考える。見てみたいかも。